磯の魚たち > 魚(幼魚)の画像 カ行 コトヒキ タイドプール(潮だまり)や浅瀬で見られる小さな魚たちの紹介

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コトヒキ 〔 コトヒキ 〕シマイサキ科
 見られた時期:7月~12月

毎年、普通に見られます。群れでいることが多く、こんな浅瀬にも、あんなタイドプールにも・・という程に劣悪な環境に順応できています。汽水域でも見られる。

動物に例えたら、オオカミですね。賢く、チームワークよく、油断できない。スズメダイ科の闘争とは異なり、あきらかに他の魚を襲う。

一匹だと意外とおとなしいのかもしれませんが・・・

左の画像はやや小ぶりのコトヒキ、まだ模様に不完全さが見られます。
本や資料等による日本近海での分布
南日本~沖縄
全長:3.0cm (成魚:30cm)
 学名:Terapon jarbua (Fabricius 1775) ⦿ 写真クリックで大きい画像
コトヒキ

7月下旬、深さ10cmほどの所で漂っていた黒い小さな魚、メジナか?と思っていたが、コトヒキの稚魚だった。

全長:1.5cm (成魚:30cm)
⦿ 写真クリックで大きい画像
コトヒキ 上記個体の10日後、コトヒキです。
全長:2.0cm (成魚:30cm)
⦿ 写真クリックで大きい画像

【 コトヒキの知られざる習性 】
 

このホームページで、他の魚と一緒の水槽に入れたくない魚といえば、シマスズメダイとコトヒキでしょう。

相手を執ように追いかけ回して死に至らしめてしまうのはシマスズメダイですが、コトヒキは人目につかないようにして相手を死に至らしめてしまうのです。

一見何の変哲もないようにみえるコトヒキですが「生魚のウロコを剥いで食べる習性がある」と記載されている本もあります。

・最初の頃のコトヒキ
 

飼育を始めて1年目の頃、磯の代表的な魚たち、カゴカキダイ、ギンユゴイ、キヌバリ、ナベカ、オヤビッチャ、ハゼ、コトヒキ等を飼っていました。まだ、水質もそれほど安定していないこともあるかもしれませんが、「ほぼ」全滅状態が3回ほどあったのです。

「ほぼ」というのは、何匹かが残っていることでして、いつも最後まで残っていたのはコトヒキだったのです。いま振り返ってみれば、コトヒキが他の魚達をすべて襲ってしまったのではないかとも思えますが、そのときは、コトヒキはそんなそぶりなど見せてはいないのですからね。

・仲間になる条件
 

成魚の雰囲気を持つ大きさに成長したコトヒキが2匹いました。この2匹は、泳いでいるとき、岩の陰で眠るとき、何時も一緒です。

あるとき、子供達の採ってきた魚たちを水槽へ入れましたが、その中にコトヒキの幼魚が1匹混じっていました。コトヒキの幼魚は襲われることはないものの、2匹の仲間に加わろうとして近づけば邪険に追い払われて、仲間に加わることが出来ません。

こうして仲間に入れてもらえないまま幾日かが過ぎていきます。

ある日、キラキラと光るボラの幼魚を何匹か入れて子供達と水槽を眺めていたとき、左奥に居たコトヒキの幼魚が水槽を斜めにスッとよこぎって右手前にいるボラの幼魚を「パシッ!」という感じで襲って、スッと戻ります。襲われたボラの幼魚は身をくねらせながら底のイソギンチャクの真上へ落ちていったのですが、この後コトヒキは再び襲う気配は見せませんでした。

不思議なことに、この出来事からコトヒキの幼魚は邪険に追い払われることもなく、仲間に加わることが出来たのです。あれは、仲間と認めてもらうための一種の儀式ではなかったのかと私は今も思っているのです。

・メジナとコトヒキ
 

磯の魚の面々とコトヒキとの混泳には仲裁役が必要だと感じて、別の水槽にいたメジナを入れることにしました。

コトヒキが幼稚園児だとしたらメジナは大人の大きさです。メジナはコトヒキと同等大の磯の魚の面々の存在は全く気にしていないようですが、ことコトヒキに対しては敵意むき出しで追いかけます。

そこにメジナがいると近づかず、こちらへメジナが来ると逃げてゆくという風に、コトヒキはメジナに対して一定の距離を保っているようです。これは思惑どうりにいきました、水槽内の平和が保てて「ヨシヨシ」と私はうなずいています。

そんなある日、メジナの様子が変なのに気づきます、水槽の底でジッとしているかとおもえば泳ぎだし、また底のほうでジッとしていてはまた泳ぎだす、といったことを繰り返しているのです。

数日後、様子は悪化していてヒレの先はつぶれ透明感が無くなってきており、メジナだけ特定の病気にかかったようです。それから数日後、「もう手の打ちようがないな・・」と思い始めた頃のこと、

メジナが水槽の中央付近をあてどもなく泳いでいると、壁づたいに泳いでいたコトヒキが、突然メジナの眼前を悠々と横切るではありませんか、しかしメジナはもう追える元気がもうありません。

そしてコトヒキはくるりと反転すると、今度はメジナの尾びれの付け根を突つくのです。今までは近づくことも出来なかったコトヒキのなんという不敵さ、なんという造反、なんという冷静さ。

メジナは力を振り絞って逃げ、ことなきを得ましたが、その後長くはもちませんでした。この一件から、コトヒキの分離というのを真剣に考え始めたのです。

・コトヒキとコトヒキ
 

コトヒキを狭い領域に入れておくと、弱いほうのコトヒキが襲われます。しかも夜だけに限り。

激しい水音のする夜、そお~っと水槽を覗いてみると、一匹のコトヒキが水面近く、水槽の隅っこで体を丸くしておびえています。しかしですよ、昼間は仲良くつるんで泳いでいる、う~む、思っていたほどの傷痕があるわけでもなし「何だったんだ、昨日の夜は?」

覗きこむ私をコトヒキは一瞥して泳いでいきます。この頃から「ふてぶてしく泳ぐコトヒキ」と、そんなふうに見えるようになりました。

・ハゼとエビとコトヒキ
 

買ってきた餌を与えても殆ど食べないコトヒキは、やはり生餌に限る、ということで、磯でエビを10数匹採ってきて水槽へ入れたとき、何故か混じってた小さめのハゼも「一緒に入れちゃったー」のです。

エビやハゼのために隠れ場所もちゃんと用意しておいたのですが、一晩でエビは全滅、隅々には死骸が散乱、しかしコトヒキは食べるつもりはないようです。「だったら何てことをするんだよ・・」

次の日、帰宅して水槽を見ると、あわれ、ハゼは頭と骨のみ・・・予測してたとはいえ、弱肉強食の世界とはいえ、見事に食後の皿の上の状態だったのです。

・イソスズメダイとシマスズメダイとコトヒキ
 

暴れん坊のシマスズメダイを別の水槽へ強制引越しさせ、その後一回り大きいイソスズメダイも同じ水槽へ引越しさせてきました。

シマスズメダイはイソスズメダイにケンカをふっかけますが、やはり体格の差からかイソスズメダイにはかないません。シマスズメダイから向かって来ない限りイソスズメダイのほうからは闘争する気はないようです。

その後3匹のコトヒキもこの水槽へ強制引越しさせてきました。イソスズメダイは一番大きいが、積極的に闘争はしない性格、というのを見込んでの仕立上げたボスで、コトヒキもイソスズメダイとの闘争はやはり避けているようでした。

数日後、シマスズメダイの姿が見当たりません。よく見ると岩穴の中でジッとしております。がヒレも体もボロボロの状態で心なしか目はうつろ。イソスズメダイはといえば、悠々と余裕の顔で泳いでおります。「はて、コトヒキかイソスズメダイか、どっちにやられたのだろうか?」わかりません。

それから数日後、イソスズメダイは妙に落ち着きがなく、さかんに周囲を気にしています。私はそれが気になって様子を見ているとイソスズメダイを囲むように周っていた一匹のコトヒキが、挑発するようにイソスズメダイの尾びれの付け根あたりを突つきます。

イソスズメダイは当然そいつを追っ払います、すると、今度は後ろから別のコトヒキがイソスズメダイを突つくのです。そいつを追っ払うと別のコトヒキが後ろから突つく・・・これは連携プレーですね、イソスズメダイが周囲を気にしていた訳です。

数日後、イソスズメダイはパイプの影に隠れており、ひれはボロボロです、シマスズメダイは岩穴で横たわっていて動きません。コトヒキは悠々と我が物顔(そう見える)で泳ぎまわっておりました。

・コトヒキその他
 

コトヒキは海に帰し、その後飼育することもありませんでした。

その他に気付いたことといえば、驚くと砂の中にもぐることもあります。通常の生活圏外と思っているが?どうやって呼吸してるのだろう。

コトヒキが相手を襲うとき、尾びれの付け根を最初に狙うことが多い、攻撃し易く、反撃され難い個所なのでしょう。